米国債とドルに対する信頼が揺らいでいる

米国債とドルに対する信認が根底から揺らぎ始めた

格付け会社スタンダード&プアース(S&P)が4月18日、70年の歴史で初めて、米国債の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(格下げ方向)」に引き下げた。1941年のS&P設立以来、第2次世界大戦でも、2001年の9・11同時多発テロでも、100年に1度の金融危機といわれた08年のリマンーショックでも引き下げられなかった最高水準「AAA(トリプルA)」の米国債の長期格付け。その見通しがついに「ネガティブ」とされたのである。今後2年以内に格下げする確率が3分の1あゐことが、ネガティブの定義。S&Pの過去20年の統計によると、ネガティブに引き下げられた国債が実際に格下げに至ったのは、全体の56%、118回あり、平均で約半年を要している。

法定上限に達する米連邦債務

ネガティブ発表よりほぼI力谷間の3月9日、米債券運用最大手のピムコは、旗艦ファンドの米国債保有を2月末時点でゼロにしたことを明らかにした。ピムコのビルーグロス最高投資責任者は、米連邦準備制度理事会(FRB)が6月に量的緩和第2弾(QE2)といわれる6000億/にのぼる米国債買い入れプログラムを終了することで、米国債の買い手が不足する可能性を度々指摘してきた。また、長引く財政赤字やFRBの金融緩和政策がインフレ加速やドル安を招くとの見方も示していた。

 

4月12日には、国際通貨基金(IMF)も「米国の今年の財政赤字が、主要先進国中で最大規模になる」との見通しを示し、赤字削減を米国に呼び掛けていた。こうした流れのなかでの格付け見通しの引き下げは、世界の市場関係者を動揺させた。しかし、債券市場の反応は極めて冷静だった。

 

18日の発表後、ニューヨーク株式市場のダウ平均は一時250ドル近く下落。債券市場の10年債利回りも一時上昇(債券価格は下落)したが、株価が下落したことで安全資産とされる国債は逆に買われ、終値の利回りは前週末比で低下した。

 

ニュ−ヨークでもワシントンでも、いま奇妙な楽観論が支配している。もともと、S&Pが引き下げたのは、先進国中最悪の財政赤字にもかかわらず、財政再建の方策を巡り、民主党と共和党の対立が激化し、合意の道筋が見えないことにしびれを切らしたからだ。このため、「S&P」の引き下げを警告として受け入れ、遅くとも2年以内に合意するか道筋くらいは示せると市場は判断した」(在米金融関係者)というのだ。

 

なかには、実際に格下げされた日本国債が暴落しなかったことを引き合いに出し、「米国債が格下げされても暴落などしない」といった意見や、「米国債以外に世界の外貨準備で買える安全な資産など存在しない」といった意見がウォール街やワシントンには少なくない。この見方は、今回もあてはまるだろうか。

 

実は米国は連邦債務の上限を14兆3000億げと法律で定めており、この上限に達すると、連邦政府機関の全面閉鎖や社会保障などの支払いに支障が出たりする。さらには、米国債のデフォルト(債務不履行)リスクも生じる。遅くても5月16日には、その上限に達してしまうのだ。

 

実際にデフォルトのような深刻な事態までは想定されていないが、野党共和党は歳出面での譲歩なしに上限を引き上げることに難色を示している。ガイトナー米財務長官は「議会は引き上げに応じる以外に選択肢はない」と強調するが、共和党はギリギリまで抵抗すると見られる。

 

米国市場ではNYダウが500ドル超の大幅な下げとなり、3月16日以来の年初来安値を更新。下げ幅は、世界金融危機の最悪期だった2008年12月1日に記録した679.95ドル以来の下げ幅だった。これを受けて、シカゴ日経225先物清算値は9300円(大証比390円安)を割り込んでいる。本日の日本株市場は連鎖安となり、日経平均は6月17日の直近安値9318.62円との攻防になろう。欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁が景気下振れリスクに言及したことや、米国ではここ数日の経済指標が景気回復の減速を示しており、景気2番底懸念に。さらに週末には雇用統計が控えており、予想を下回る悪化ともなれば一段安の可能性もあるため、リスクを避ける狙いから押し目買い意欲は後退しそうだ。為替相場(FX)、株式市場の動向から目が離せない。